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現代科学と仏教③

欧米の識者や哲学者は、数ある宗教の中で現代科学ともあまり矛盾しない宗教は仏教と言います。数回にわたってその例を紹介していきます。

3回目は、<唯識と深層心理>について概説します。

唯識(ゆいしき)は人の心である意識の構造を示し、その中で最下層の根本識「阿頼耶識あらやしき」は深層心理に相当し、現代の精神分析を千五百年も前に先取りしたとも言えます。

「空」の思想を発展させ、すべての事物は心がつくり出した表象にすぎず、ただ八種類の識によって個人も世界も成り立っているという大乗仏教の見解の一つです。

八識は、前五識=五感(眼識=視覚、耳識=聴覚、鼻識=嗅覚、舌識=味覚、身識=触覚)と意識(自覚的意識)、二層の無意識(末那識と阿頼耶識)を指します。末那識(まなしき)は、眼、耳、鼻、舌、身、意の六識の背後で働く自我意識で、煩悩の元でもあります。

ただ識だけがあって外界は存在しないという心のあり方を、ヨーガで調節して悟りを得ようとしたものです。七高僧の第二祖、天親菩薩がこの唯識思想を大成しました。